言葉のフォッサマグナ

  関西から出て、もう少し大きな範囲で、言葉のことを書きます。 1年以上前か、こちらで、ミノ・モンタが司会をしてた「何とか、県民ショウ」というバライティ番組を見ました。 その中で、大分県では、10時10分前を、10時前10分というと、ありました。 そして、大多数の大分県人は、そのことが大分県だけの表現であるのを知らないように、番組では紹介していました。
 
 まあ、民放のバライティ番組なので、どのへんまで信用できるかわかりませんが、このように、メディアの発達している今でも、ある地域独自の言い回しが、かなり残るものなのですね。 私は、10年程前、沖縄に住んでいましたが、沖縄では、アルファベットのAを大文字(おおもじ)と言うのはいいのですが、aは、小文字(しょうもじ)と言っていました。
 
 昔よく、東京人は、「ひ」がよく発音できなくて、「し」になると言われていました。 たとえば、日比谷が、渋谷に聞こえたり、夕日が「ゆうし」になってしまうということです。 しかし、そんなことを書いている本も、西日本に住む人間が、どちらかと言えば、その反対の傾向にあるというのを書いているのは、あまり見たことがありません。
 
 数字を1から10まで数えるとき、7は、「しち」ではなく「ひち」と呼ぶ人間が、西日本には多いです。 このことなども、自覚はほとんどないでしょう。 私も、一番最初、日本語を教えるようになったとき、7の数字の読みのルビが、「しち」になっているのを見て、「あれ、そうかいな」と、首をかしげたものです。 
 
 それからは、いろんな場所で、体操や運動するときの号令をかけている人が、「しち」というか「ひち」と言うか、よく注意して聞くようになりました。 ただ、運動する人たちの号令ですので、多くの人の発音は、どちらともとれないような、わかりにくいものでしたがーーー(笑)。 
 
 かわって、NHKのアナウンサーの中には、何々研究所とか保健所などを、「けんきゅう・じょ」とか「ほけん・じょ」とか言う人がいますが、我々は、「~~しょ」と言い、濁りません。 「じょ」と言うのは、近所と便所ぐらいなものです。 所長がいるところは、やはり、「しょ」の方が、いいのではないでしょうか。 しかし、最近は、NHKでも「しょ」という人が、増えている気がします。
 
 また、以前は、ほとんどのNHK職員が、鼻濁音を強調していましたが、最近は、あまり目立たなくなった気がします。 鼻濁音では、私が、以前、こちらアイルランドで、日本語を教えていたアイルランド人の若い女性(当時)の話が、思い出されます。
 
  その彼女は、今からでいうと、たぶん20年以上前、日本の東北地方の中学校で、英語を教えていたそうです。 そこでは、生徒たちは、sugarという単語をうまく発音できずに、どうしても「シュンガー」のような発音になってしまうと、言っていました。 でもしかし、逆に~ingの発音などは、その他の地域の生徒より、うまく発音したかもしれませんがーーー、これは、私の想像です。
 
 もう一つは、まだまだ、関東風といおうか東日本風といおうか、そちらの影響が強い言い方ですが、これは、おそらくNHKでは、強制されていると思いますが、NHKのアナウンサーは、10時10分のことを、「じゅうじ・じっぷん」と言います。 おはぎ10個を、「じっこ」と言います。 
 
 この言い方は、関西人いや西日本人の多くには、とても違和感があります。 10は、「じゅう」だから、それに数詞などが付いたら、「じゅっぷん」や「じゅっこ」と、言うほうが理にかなっているだろうと、思う人が多いはずです。
まあ、もちろん、これなども、いくらメディアの交信が発達しても、互いに、その言い方を変えないでしょうが。
 
 NHKの日本語(にほんご)、もう少し書きます。