極めて単純なアイルランドの経済構造

 今回のEUやIMFからのアイルランドへの資金援助は、主にアイルランドの銀行の経営破たんによるものです。
 
 今回のIMFによる救援の前にも、すでに公的資金が多く投入されているのに、結局は、また銀行を助けるために、国が借金をしていることに、アイルランド国民の憤まんは、高まるばかりです。
 
 そもそも、この国の経済構造は、非常に単純です。 まず、国内で自立し、多くの雇用を抱えるような会社がありません。 それで、アメリカを中心とした多国籍企業を多く誘致して、雇用を確保するというやりかたです。 そのために、例の法人税も世界的な低さにしているのです。 
 
 それで、この国の人びとは、仕事さえあれば、元来ののうてんきな消費好きですし、いわゆる内需というものが活性するという具合になります。 まず、人びとは、不動産(特に、住宅)に積極的に投資します。 私たち夫婦の知り合いなどの多くも、今回の不況まで、個人で2~3軒の住宅を投資目的で所有している人が多くいました。
 
 その住宅需要で、建築関係の仕事人が潤う。 大工や電気屋、配管工、そして不動産屋などです。 アイルランドでは、これらの建築関係の就業者が、全体の労働者に占める割合が、日本などと比べて、かなり高いものになっていると、思います。 特に、首都ダブリン以外では、兼業農家と建築関連業者が、地域のほとんどのGDPを産出していると言えるでしょう。 他には、もちろん、公務員がいますがーーー。
 
 で、お分かりのように、今回のリーマンショックからの銀行不況。 アイルランドでは、建築業界の負債が、すでにピンチの銀行にさらに追い討ちをかけました。 最初は、アメリカなどからの企業が撤退して、雇用がなくなったのが、第一の原因でしょう。 いくら、法人税が安くとも、本家の会社が危ない時に、アイルランドに居られません。 
 
 そのあと、失業者は、投資した不動産を手放すことは、もちろん、自分の家の住宅ローンさえ支払えなくなる。 国中のいたるところに、売れ残りの住宅物件が散在し、ゴーストタウン化する。 建築業者は、倒産する。 銀行は、その負債を抱える。 
 
 これが、バブル(アイルランドでは、1998年頃から2008年まで)で、一躍、日本などより一人当たりのGDPを上回り、「ケルティック・タイガー」と呼ばれたヨーロッパの周縁の地のたった10年あまりの経済盛衰物語です。