2050、日本沈没(1)

 禅宗の逸話に、こういうのがあります。 ある家に、赤ちゃんが生まれました。 そこにある僧が、訪れ、「祖父死に、父死に、子死に、孫死ぬ。」と言いました。 家の主人は、「何てことを言う、縁起の悪い。」とその僧に言うと、僧は、「何を言う。 親が死んで、そのあと子が死ぬ。 これが、一番良いことじゃ。 その逆になったらどうする。」と言った。 その家の主人は、「ああそうか。」と感心したそうです。 

 だいたい、こういう話だったと思います。 まあ、禅の精神は、さておき、このことは、今の日本に突きつけられた重大なテーマでは、ないでしょうか。

 年間3万人の孤独死といっても、たかが、人口の0.03%と思うかもしれませんが、この現状は、加速度的に悪化し、国全体の平均年齢も益々上昇する中、この国の舵取りを、本当に危機的な気持ちで解決していかなければ、タイトルに書いた2050年よりも前に、この国は、崩壊するかもしれない。 

 国が崩壊するかもしれないといっても、我々は、結局、自分ひとりの死あるいはごく身近な家族などの死が、問題になるだけで、国のことはどうでもいいと、いう人もいるかもしれない。 いずれ、地球温暖化などで、人類全体もどうなるかわからないし。 

 でも、私は、100年後は、わからないけれど、せめて20年、30年先の世の中は、そんなに悲惨なものになってほしくない、と思っています。 そして、生物の多様性が尊ばれるように、文化の多様性も尊ばれなければならないという観点からも、日本というアジア大陸の周縁で花開いたこの文化をぜひ継承してもらいたいという気はあります。

 現実の話に戻ると、日本は、諸外国以上に借金もあります。 もちろん、日本国民は、多くのタンス預金を含めた預貯金を持っているということも事実ですが、それが、若いカップルの将来の家族設計にどれだけ寄与するでしょうか。

 フランスなどで、国の若い夫婦に対する援助の結果、出生率の向上が見られ、日本も見習わなくてはいけない、といった報道があります。 しかし、この出生率の数字は、私は、少し疑っています。 それは、元々いた白人系のフランス人の間でも、その出生率が伸びているのかどうか、ということです。 

 ご存知の方も多いかと思いますが、フランスにもアフリカやアジアから多くの移民が、来ております。私は、7~8年前、パリに日本の本屋を探しに出かけたのですが、空港からパリ市内までの40-50分の電車で、その大半の乗客の顔色は、私のより浅黒いものでした。 ロンドンは、私が初めて行った30年前でも、そういう状況であったのですが、パリも同じような移民の町であるとは、実感していませんでした。(たぶん、フランスじゅうの大都会は、皆同じようだと思います)

 私が言いたいのは、このフランスの出生率の向上は、主にアフリカ系・アジア系のフランス人によるものではないのか、ということです。 まあ、そうではなくて、国民全体の均一な出生率の改善が、政府の政策によってなされたと思いたいです。 そうすれば、本当に日本にも参考になるかもしれませんが、果たしてどうでしょうか。

 今現在の経済の状況から言えば、私の住むアイルランドの方が、日本より酷い状態であると思います。
そして、私は、このアイルランドの政府の対応は、あまり良くなく、かなり心配しています。 でも、この国は、EUの中にあります。 EUの全人口の1%以下のアイルランドのような小国は、そこでなんとか救済されるだろうと、私は、楽観しています。 EU各国の精鋭が集まり、厳しく議論していく中で、問題の解決が図れると、思っているからです。

 さて、わが母国、日本は、どうでしょうか。 私は、政治や経済の専門家でも何でもないので、なんの特効薬もしりませんが、ほんとうに思い切った政策をしないと、この国はジリ貧でしょう。 しかも結構早いスピードで。