ヒーローになれない日本。 マイケル・ケインはすごい!

 アイルランドには、一般の人々と全く違った生き方をしている集団がいます。 いわゆるジプシーの末裔と考えられている人々で、今は、トラベラーズと呼ばれています。
 この人たちのことは、次回にもう少し詳しく書きますが、一般社会には、彼らに対するかなりの偏見と差別感情が蔓延しています。 その生活実態は、日本の部落などと全く比べ物にならないほど、一般社会とのギャップがあります。 
 
 ただ、アイルランドでもアメリカでもそうだと言えると思うのですが、こういう社会の下層にいる人たちでも、そこから這い上がって、その個人が、社会的名声や地位を得たとき、その個人に対する評価は、もともとの金持ちや地位の高い人々の子や孫が、そうなったときよりもさらに高いものがあるように、思えます。
 
 かってのアメリカで言えば、多くの芸能人が、ユダヤ系やイタリア系や黒人であるといったハンディキャップがあっても、有名人となった彼ら自身には、その出自がわかっても賞賛の言葉が与え続けられる。 まあ、アメリカの場合、今は、大統領自身が、アングロサクソンどころか、白人ではないという時代に入っているので、このような一般のマイノリティーに対する差別の感覚が、どのへんにあるのか、実のところ、この私にはよくわかりません。 

 とにかく、アイルランドを含め、多くの西欧諸国で言えることは、結局、その個人がどのような人間になったか、ということであり、出生時の条件といおうか状況といおうか、そういうものは関係ないということだと、思います。

 数年前、こちらアイルランドのテレビを見ていたら、イギリスで現在、ショーン・コネリーと並ぶ大物俳優であるマイケル・ケインが、インタービュー番組に出ていて、彼が、そのアイリッシュ・トラベラーズの出身であると、堂々とそして半分ユーモラスに語るのを、その生放送の人気テレビ番組で見たとき、ああーーー日本とちがうなーーーーーーと、心底、思いました。

 ご存知のとおり、日本の芸能界にも、おおくのマイノリティーグループからの出身者がいます。 マイケル・ケインにも負けないほどの大物俳優もいます。 在日コリアンなどは、今、かなりカミングアウトしていると思うのですが、その彼らでも、人気のあるインタービュー番組で、公然と自分の出自を話すということのできる人は、私の知る限り数人程度です。 
 
 まして、部落の関係では、ペーパーでさえ公に書かれたものはありません。 それだけ、まだ、人々の偏見が強いのかもしれません。 でも、卵が先か鶏か、ではないですが、私は、何事も、問題解決は、やはり広く公然と社会に知れ渡り、そして、議論してはじめて、そういうことが達成されると思います。 まあ、これまで、特に何もしなかった私が、偉そうなことは言えませんが。 

 そういう意味で、今、人権問題に関する認識が、以前よりよくなったように見えるこの現代で、特に、若者に大きな影響を与える芸能人などが、もっと積極的に自分の過去を公開することは、この問題の解決を早める有効な手段の一つと考えます。