アイルランド概要 その2

 そのアイルランドですが、私の意見より、もっと高尚な方の意見が知りたいという人には、司馬遼太郎の愛蘭土紀行をお薦めします。 司馬さんの意見、言外に込められているニュアンスを含め、私にはよくわかります。総じて、ネガティブです。 でも、司馬さんは、たった数週間の滞在で、よくあそこまで書けたものです。 もちろん、綿密な長期に渡る下調べとまわりのスタッフの協力があったろうとは思いますが、やはりすごいですね。 彼の祖父か父が、姫路出身であるということも私に親近感を持たせます。

 話は、アイルランドですが、ちょっと身近なところから、私は、日本とこの国の文化・生活習慣で、一番大きな相違を1つあげよ、と言われれば、躊躇なく、それは、家の中でも靴を履き続けるか、そうでないかという点につきます。 
 私も最初1993年にこの国に来たときは、長期の旅行者気分で、アイルランドの文化を勉強しようとしてたので、すべてのことを肯定的に受け止めていました。もちろん、ホームステイ先やアパートでも靴を履き続けることは、問題ありませんでした。 ただし、自分の個室にいるときは、当然脱ぎましたが。 
 
 しかし、それから、やく10年前に自宅を建築する際には、自分の家の中では、やっぱりカーペットの上でねっころんだりしたいので、アイルランドの家であまり例のない玄関部分の段差をつくり、完全に日本式に靴を脱ぐ家にしました。 もちろん、アイルランド人の家でもカーペットを綺麗にしている人は多いとは思いますが、それでも、靴を履くことは、床材をより早く傷つけることは確かでしょう。 まあ、多少、これは、日本人の観念的なものも関係していると思いますが。 

 とにかく、我が家はそうして始めましたが、これを、私の妻の家族や友人、ましてや近所の人に徹底させるのは、至難の業です。 アイルランド人に玄関という場所の意味をわからせるのはまず無理でしょう。私の知人の柔道や空手をするアイルランド人でも、そんなことは、まあ一切知らないと言えるでしょう。

 たぶん、私は、どちらかと言えば、綺麗好きな方ですし、清潔というよりも整理整頓をちゃんとしたいタイプです。 時間とかの約束事も計画通り、きちっとしたい人間です。まあ、そういう人間には、このアイルランドという国は、不向きですね。 
 家を建てるとなると、大工や電気屋、配管工などの皆さんにお世話にならなければなりませんが、こういうことを計画立てて組織立てて行動するということに、非常に苦手なようです、この国の人は。 でも、私の家は、最初から私たちが、急かしていたせいもあり、標準よりずっと早く完成しました。 しかし、その後でも、電気屋に来てもらう用事ができますよね。 そういう時には、もうちょっと落ち込みます。 彼らが、本当にいつ来るかわからないからです。 来ないかもしれない、たとえ、”はい2週間後に行きます”と言ってたとしても。
 
 で、そういう業者の靴は、とくに汚いのですが、彼らから靴を脱がせるのは、より一層難しいし、そのことで、その仕事がうまくいかなかったり、料金をたかくとられるのもいやですから、なるべく、そういう人間が来ないように、そして家計のためにも、必然的に自分でできる限りのDIY(日曜大工)技術を高めようということになります。
 まあ、おかげで家のペンキ塗りやタイル張りはもちろんのこと、キッチンユニットづくりやちいさな家具づくりは、自分でしました。 もちろん、日本あるような精巧なものではありません。 たとえば、私たちの家には、ゴキブリがいませんので、キッチンユニットにかれらが通り抜けする隙間をつくらないようにする必要がないからです。 

 私は、今では、日本にいた頃には考えもつかないほど、多くのDIYをしていますが、それでも、日本人は、皆器用ですから、私の腕前は、日本人の平均程度だと思います。 まあ私の場合は、力は、日本人の平均よりだいぶ上だと思うので、大きいことや重い作業を一人でできるということは、あると思います。
 今回は、この辺で。 続く。