アイルランドのとても暗い(ほんのちょっと前の)過去

 ここ数週間、日本の暗いと言おうか、深刻な過去について書いていますが、実は、昨日、こちらアイルランドのケニー首相が、その国会で、涙ながらにある女性たちに国家として犯した過去の大きな罪について、謝罪したという大きなニュースがあったので、そのことについて少し書きたいと思います。
 
 アメリカやイギリスでも似たようなスキャンダルがあったようですが、アイルランドのそれは、マグダレーン・ローンドリーズ(Magdalene Laundries)という名でよばれています。 日本の方には、全く馴染みがないこ言葉だと思いますし、日本語で何と訳されているかも知りません。
 
 簡潔に言いますと、戦前からごく最近の1990年代まで、アイルランドでは、女性が性的な罪などを犯した場合、その女性は、強制的に修道院などの付属の宗教施設に収容されていました。 例えば、正式な婚姻関係の無い女性が妊娠したり出産すると、それは、罪だとみなされ、その女性の家族から、そういう施設に送られてしまうのです。 家庭がすごく貧困だった場合なども、その家族の中の若い女性が、このカトリックの施設に送られてきたようです。
 
 この施設に収容された女性たちは、下着やシーツなどの洗濯を四六時中やらされ、それもタダ働きであり、外部の世界への出入りなどの自由も全くありませんでした。 そういう洗濯物は、ホテルなどの外部からも持ち込まれていました。 本当に働く奴隷でした。 もちろん、修道院の尼僧の仕打ちも厳しかったようです。 洗濯が主な仕事だったので、ローンドリーと呼ばれている理由ですが、その前のマグダレーンというのは、聖書に出てくる娼婦の女性の名前からきたそうです。 そうです、彼女らの行為は、娼婦と同等に扱われ、このような罰を受けていたのです。 しかし、そういう関係を持った相手方の男たちには、特にオトガメはなかったようです。 ここにも、カトリックの男尊女卑の精神が出ています。 レイプによるものであっても、この施設に送られた女性もいるということです。
 
 各個人が収容されていた期間は、平均で1年以内くらいだったそうですが、それ以上の人も多くおり、一生涯いたという女性もあったようです。 アイルランド全体で、3万人以上の女性が、累計で収容されていたという数字もあります。 北海道と同じくらいの面積と人口の国としては、驚くべき大きな数字です。 そして、この国じゅうにあったという、こういう施設は、1960年代にほぼ消えていきましたが、最後のは何と1990年代まであったそうです。
 
 この事件と言おうか、スキャダルは、何年も前から報道されていて、私も知っていたのですが、このたび、日本で言う第3者委員会のような機関の最終レポートが報告され、このたびの首相のお詫びの言葉となったのです。 これは、第一義的には、カトリック教会の行為ですが、ここアイルランドでは、国とカトリック教会は、一心同体のような存在であった(今もかなりそうですが)ので、こういうことになったものです。 
 
 アイルランドのカトリック教会では、これ以外にも、子供たちへの虐待のスキャンダルが、少し前に大きな問題になったばかりでした。
 
 こういう大きな暗い過去の膿を出すのは、大変ですが、私なんかは、そういうことが表にでるほうが、何か少し安心するものがあります。 どこかの国も、膿はちゃんと綺麗に外に出してもらいたいものです。
 
 このマグダレーン・ローンドリーズのまだ存命の生き証人の女性たちは、この政府の公式の謝罪と、それに伴う経済的援助も約束され、喜んでいるという記事が、こちらの今朝(水曜日)の新聞にありました。