食育とは何ぞや!

 日本では、今、冬の嵐に襲われていますね。 こちらアイルランドでは、そういうのが一冬にまあ4-5回来るという感じですか? ただ、アイルランドに来る強い低気圧というのは、比較的温かい風を伴なっており、吹雪になることはまずありません。 その代わり、鬱陶しい雨風、そして鉛色の曇天です。
 
 そういう天候の中のせいか、はたまた、日本での選挙の結果のせいか、私の心も、ここ2・3日沈鬱です。 通常は、冬時間に変わってすぐの11月に鬱陶しい気分になるのですが、今年は、日本から戻ったすぐ後ということもあり、日本での楽しいことの余韻に浸っていたり、また、このブログに書くことがあったということもありで、11月は乗り切っていたのですが、通常なら、クリスマスや正月気分を迎え、そんなに苦でない12月の今頃わりと滅入っている状態です。 
 
 クリスマスの行事自体は、もちろん、もう特にうれしいなどというものでもないのですが、実際、休みに入るという物理的な気楽さが、通常は、気分を楽にしていました。
 
 でも、一番、問題なのは、多分、ヒマすぎるせいだと思います。 夕方の運動は、今も毎週きちっとやってます。 この運動をしないのであれば、私は、タダの怠け者でしょう。 で、家族がいない午前中が一番の問題なのですが、ブログの記事ネタも無くなり、これからどうしようと思案しています。 以前、やりかけていたスペイン語を気楽にまた再開しようかなとも思っていますがーーー?
 
 さて、今日書きたいのは、日本で買ってきた本を、この間読み始めていて私にはナカナカ興味深かったので、ここに紹介させていただきます。 今日のは、このカテゴリー(書庫)に関する本を紹介します。
ですから、また、ブログの検索の対象にならない記事なので、あまり宣伝効果もないということですが。(ナニ? 元々、訪問者の数少ないって? そうなんですがーー。)
 
 おっと、その前に、昨夜の「我が心の大阪メロディー」良かったなー。 やっぱり、坂田のトッちゃんが最高でした。 もう73か。 あそこまで、あの芸を続ける職人魂に、笑いと涙と感激! それと、最後のシャーロットの蛍の光(オールド・ラング・サイン)にも、また泣きました。
 
 さ、本ですが、1冊目は、上原善広(よしひろ)の「石の虚塔」(新潮社)という本です。 これは、日本の旧石器時代の石器の発掘発見に貢献した人を紹介すると共に、皆さんも記憶に新しいこの時代の石器発見の捏造事件に絡む人物をルポしたドキュメンタリーです。
 
 本の装丁からは、この捏造事件が主題かと思ってしまいますが、それよりも、この捏造を操作したアマチュア考古学者藤村新一が、その旧石器時代の考古学で尊敬する二人の考古学者の話にもっとページが割かれています。 
 
 その人たちは、一人は、アマチュア考古学者の相澤忠洋(あいざわ ただひろ)という人で、この人は、戦後すぐ日本に無いと思われていた旧石器時代の石器を発見した人です。 もう一人は、それまで日本での存在を疑問視されていた旧石器時代というものを、この日本でも確固たる存在として社会に認知させてきた功績者の東北大学教授・芹沢長介(せりざわ ちょうすけ)です。
 
 詳しい内容は、読んでみてほしいのですが、私が、特に面白いと思ったのは、この相澤氏の父親は、所謂ドサ周りの旅芸人の仕事をしており、この息子の相澤氏は、子供の頃から大変な苦労をしてきた人だったということが一つ。 もう一つは、最後は、東北大学の教授にもなり権威の象徴的存在だった芹沢氏も、最初は、アマチュアの考古学者に理解のある開明な人であったようです。 
 
 で、その彼の父親という人は、染色家で人間国宝にもなった人なんですが、この本の中では、藍染めなどは、かつては非人の職業であったと書いてます。 ということで、この両者の親たちの職業は、昔では、ある種の身分の人間の職業であったという点で、私にもかなり興味のあるところでした。
 
 この著者の上原氏の本は、以前のこの記事でも紹介していますが( http://blogs.yahoo.co.jp/ueno828/32166582.html ) 、彼も部落の出身として、この辺のところにかなり興味を持ったのではないかと推測します。
 
 藍染めに関しては、私も他の本などで、賤民身分の者の仕事であると聞いたことがあります。 そう思っていると、つい最近、NHKの「趣味DO楽・にっぽんの布」という番組で、藍染めを紹介していました。
 
 植物の藍の生産で、江戸時代の阿波・徳島藩の生産者の繁盛ぶりなども紹介されていましたが、当然、その身分的なことについては、何の言及もこの番組ではありませんでした。 また実際どうたったのか、私は、よく知りませんが、ウェブを少し見ていたら、多少そのようなことを書いているものもあることにはありました。
 
 ただ、以前、私も書いたのですが、藍染めの工程で、何か動物由来の材料を使うので、差別の対象になったのかもしれない、ということをどこかで読んだのですが、この番組では、藍染めの実演も紹介していましたが、番組の中では、動物性のものを使っているようには見えませんでした。
 
 
 さて、もう1冊紹介します。 こちらは、内澤旬子(うちざわ じゅんこ)という人の書いた「世界屠畜紀行」 (角川文庫)という本です。 これは、この女性ドキュメンタリー作家が、まだたしか20代の頃、モンゴルで見た羊の食用としての解体作業に興味を持ち、それ以来、焼き肉などで食べる肉の、その元となる屠殺屠畜(とさつ とちく)さらに解体の工程は、どうなっているのか、ということを知りたくて、日本そして世界中を果敢に旅し、ルポしてきたことを書き込んだ大作です。
 
 こういうことを、都会育ちの普通の女性(本を書く才能はあります)が、書いてくれたことに、私としては、非常に感動しました。 この本にもありますが、普通の現代人は、この屠畜の現場には、まず長いこと居れないと思うからです。
 
 私自身は、と畜場で働いた経験はありませんが、獣医師の仕事の中でも、大事な職種です。 私も、仕事ではありませんが、大学の卒業論文の関係で、大阪のと畜場には何回も行ってますし、就職の時に、地元の姫路のと畜場なども見学しています。 さらに、幼児の頃、長姉が姫路のハムの工場で働いていた時に、豚の解体物をその頃からよく見ていました。 この姉の自転車での通勤時に、その荷台に乗って工場まで行ってたことを今でもよく覚えています。 この姉は、働きながら、私の面倒も見ていたのです。
 
 
 まあ、ちょっと余談になりましたが、この本の中では、東京にある豚の皮革工場なども紹介していました。 そうですよ、皮革産業は、兵庫と東京と和歌山ぐらいしか、もう残ってないのですよ。 こういう所が、クールになる時代が、来るかもしれません!
 
 それと、少し前、テレビなどで食育の大切さなどが、よく報じられていましたね。 このごろは、どうなんでしょうか? 私などが思うのに、食育というのであれば、この家畜の飼育から、その食肉やその他の産物の生産過程、また、排泄物の処理などの工程なども、全国民が知っていなければならない大事な食育だと考えます。
 
 長くなりすぎましたので、もうすぐ終わりますが、このような素晴らしい本を書いている上原氏や内澤氏の活躍を見ると、ホントに頼もしい感じで、気分が良くなります。 そして、こういう本に書かれている問題が、すこしでももっと社会に認知されたらなーーと思っています。 焼き肉を食いたいのであれば!
 
 また、他に、部落の関係で、ウェブをサーフしていたら、ソプラノ歌手の渡辺千賀子(ちかこ)という人がいるらしいのですが、この人が、いろいろ人権の啓蒙活動を盛んにやっている、と今回初めて知りました。 彼女は、三重県の生まれで私より年長のようですが、20歳前後まで、自分のムラが部落だとは知らなかったようです。 つまり、私トコのような典型的な部落産業がなかったのでしょう。
 
 こういう人の存在を知ると、勇気が出ますな! ホントに、長くなりました。 では。
 
 
数時間後の訂正;
 上の記事の中で、ドキュメンタリーと何回か書いてますが、これは、ノンフィクションと書くべきところでした。 ちょっと、うっかりしてました。 書物の場合は、ノンフィクションですね。