「会議は踊る」、そして、人生も「ただ一度だけ」。

 先日から、私の好きな歌・音楽のことを書いてきましたが、もう一つ、ついでに書きたいと思います。 実は、この系統の音楽は非常に賛同者が少ないと思われましたので、書コマイと思っていたのですが、これまた、ひょんなことが重なり、書く事にしました。
 
 私の育った家は、書いてきたような環境でしたので、クラッシクだとか、ジャズだとかハイカラなものを聞く機会もなかったし、それらを教えてくれる人も家族や近所にはいなかった。 当然、年上の兄や姉の聞くテレビやラジオからの歌謡曲がすべてであり、小さい頃は、私もそれらが大好きでした。
 
 外国の音楽は、この前書いたヤンリクで、主体的に出会ったわけですが、その前に、私が小学6年生頃、私の真ん中の姉が、ヨーロッパ映画音楽のサントラ版LPを買ってきて、それを聞き出したのが、最初と言えば最初にちかいでしょう。 それには、「禁じられた遊び」や「第3の男」、「ブーベの恋人」、「白い恋人たち」、「夜霧のしのび逢い」などがありましたが、一番気に入ったのはアラン・ドロンの「太陽がいっぱい」でした。
 
 それから、洋画をよく見るようになりました。 で、確か、私が15か16の時、NHKの教育テレビで、「世界名画劇場」という番組で、戦前の白黒の映画を次々に放映してくれたのです。 当時、外国かぶれだった私には、最高の番組でした。 そこでは、ゲーリー・クーパーとマレーネ・ディートリッヒの「モロッコ」やグレた・ガルボとロバート・テーラーの「椿姫」、ジャン・ギャバンの「望郷(ペペルモコ)」、ビビアン・リーとロバート・テーラーの「哀愁」などの映画史に残る名作をいくつも出してくれました。 当然、私は、そのような銀幕のスターに憧れました。 とくに、グレた・ガルボについては、いろんな本も集めましたし、おばあさんになった彼女に、ニューヨークの住まいまで面会に行きたい、と思ったほどでした。
 
 で、その世界名画劇場でのシリーズで、戦前のドイツ映画「会議は踊る」を見たときに、衝撃が走りました。 この映画の中の日本訳「ただ一度だけ」という歌の楽しく、胸躍るような雰囲気、その映像とともに、私は、本当にこれに感動しました。 映画のストーリーそのものは、大したこともないのですが、このオペレッタと呼ばれる音楽の流れるシーンは、私にとっての映画のベストシーンの一つになりました。 
 
 この映画は、あのヒットラーが出てくる直前(1931年)に作られたドイツ映画の黄金期最後の傑作と言われています。 でも、1973年ごろに見た私は、恐らく、私の高校のまわりの誰もが、こんなものに興味がないだろうと思い、自分だけの楽しみにしておきました、 
 
 でも、おそらく、この世界名画劇場で、日本全国的には、いくらかの新しいファンができたかもしれず、このあとすぐに、「戦前欧州映画主題歌集」というようなタイトルのレコードLPが発売されました。 フランス映画編とドイツ映画編の2回別々に。 私は、これらのレコードを姫路駅の地下街にあったレコード店で見つけ、感激の思いで買いました。 このレコードを録音したカセットそしていまはCDを今も持っています。
 
 このドイツ語やフランス語の歌は、もちろん訳なしでは、意味もわかりませんし、訳のないものもありましたが、ナント言おうか、メランコリックな感じや伝統音楽の感じ、ノスタルジックな感じ、何かそのようなものの混ざったものが私には感じられて、どの曲も素晴らしいと思ったものです。 まあ、今思えば、そういう外国への憧れ(思い入れ)というものが、そうさせたのでしょうがーーー。
 
 で、このことを、このブログで書こうか、書こまいかと思っていて、とにかく、ユーチューブにあるかどうかと、見てみたら、やはりいろいろありました。 この「会議は踊る」の主題歌は、ドイツ語では、Das gibt nur einmal のようなタイトルですので、この記事を見られた方も、もしよろしかったら一度聞いてみてほしいです。 どう、お思いになられるか、興味ありますね。
 
 実は、今年の正月前後に、私の友人が、アニメ映画「風立ちぬ」を見て感動した、というような便りをくれたとき、私は、あまりアニメに興味がありません、でも、この映画では、ユーミンの曲が使われているので、若い人が、ユーミンの初期の歌を知ってくれるのはうれしいな、などというような返事をしました。 
 でも、今回、ユーチューブを見ていると、この「風立ちぬ」の映画の中で、なんとこの「会議は踊る」の音楽が使われているようですね。 私は、本編を見ていないので、どういう使われ方か、はっきりとはしませんが、とにかく、この歌が、多くの日本の今の若い人に届いたことは、私にも、うれしいものがあります。 ユーミンといい、この歌といい、何か偶然ですが、私にこのことを書きなさい、と言ってくれたようで、今日の記事となりました。
 
 
 私が、初めてこの歌を聞いたときは、この「会議は踊る」の映画ができてから約40年経った時でした。今は、それから、また約40年経過しました。 私が見たこの時の「世界名画劇場」では、、この映画を戦前に見た人の評価も紹介してあって、彼らには、本当に感動の映画だったようです。
 
 今も存命ならば、その人たちは、80歳を越えているはず。 今の私は、1973年当時の彼らの年齢を越えるような歳になってしまいました。 この歌のタイトルのように「ただ一度だけ」の人生、何とか、うまくおさめたいものですがーーー。