「JAP」は、北朝鮮が国連で使うだけではありません。

 このようにアイルランド英語のことを書くと、私と私のアイルランド人の妻との会話は、大丈夫かいな、と思う人もいるかも(いないかも)しれません。 でも、妻の英語は、幸いに、あまりアクセントのキツイものではありません。 それは、妻の両親が、アイルランド国内を転々と引越ししたことにもよると思いますし、彼女は、ロンドンで数年間働いていますし、日本でも、英語教師として、3年間いました。 
 
 そういう自分の英語とかなり異なる他のいろいろな英語話者との接触があったせいでしょう、彼女の英語は、私には、聞き取りやすいものです。 もちろん、それは、長年一緒にいるからというのが、一番の理由でしょうけど。 でも、彼女のTの発音は、例の「シュ」の音ですが。
 
 前回、イギリスをからめると言いましたが、イギリスの数ある方言を語ろうというわけではありません。 イギリスには、日本人は多くいるので、その関係のブログは、すでにいっぱいあると思います。 ただ、イギリスの場合、地域もそうですが、教育・職種によっても、そうとうな差がある感じです。 
 
 サッカーのデイヴィド・ベッカムのインタビューを何年か前、聞きましたが、それは、本当に、イギリス南部の庶民の英語という感じで、とても洗練された上品な感じ(と一般に思われている)のものではありませんでした。 今は、彼は、プレイヤーというより、セレブとしての活動が多いので、言葉使いも変わっているかもしれません。
 いや、日本人のようにあまり周囲にとらわれないので、ひょっとしたら、以前と同じような喋り方かなあーー、いまでも。 
 
 でも、これは、私が、まさに繰り返し言いたいことです。 日本の芸能人なども、地方から東京へ出ても、ふるさとの言葉を安易に捨てずに、その方言に誇りを持って、堅持していってもらいたいものです。 それが、出自に対する誇りにも、かかわってくるものでしょうから。
 
 話は、ちょっと横にそれましたが、言葉に戻って、イギリスやアイルランドのテレビを見ていて、日本のそれと違うのは、外国や外国人に対する皮肉やカラカイの表現が、結構出てくることです。 このへんは、日本などとの放送コードとかなり差がある感じです。 ご存知のとおり、アメリカ社会では、差別的表現などに非常に厳しいものがありますね。 ただ、アメリカのテレビ放送では、どれくらいの厳しさがあるのか知りませんが、それでも、例えばJAP(ジャップ)という言葉は、使えないと思います。 
 
 しかし、イギリス人やアイルランド人は、JAPを平気で使います。 テレビでも出てきます。 アイルランドで一番人気のあるトーク番組でも、その言葉が出てきて、ちょうどアメリカ人のゲストだったので、そのアメリカ人は、あわてふためいてました。 それを言った司会者は、数日後、別のラジオの番組で、「JAPというのはイケナイ言葉ではないね?」と、周りのアイルランド人にたずね、確認をしていました。 もちろん、たずねられた人たちも、「いや問題ない。」と言っていました。
 
 この程度です。 私が思うに、イギリスやアイルランドでは、JAPという言い方を日常よく使い、そして、それがとくに蔑称であるという認識を、多くの人はもってないということです。 柔道の先生をしていた私にも、使ってました。 まあ、これは、JAPだけに限らず、自分たちのBRITS(イギリス野郎)やPADDY(アイリッシュ野郎)といった言葉も、厳密には蔑称ですが、結構、コミカルに使われることも多いです。
 
 それと、放送コードと言いましたが、日本では、例えば黒人のことを皮肉った言い方をすれば、そのあと、すぐそれを言った人が謝るか、テロップで「先程、不適切な表現がありました。 ここに、関係者の皆様に、心よりお詫び申し上げます。」などと、大々的にでますね。
 
 10年程前だったか、イギリスのテレビ番組で、クイズ番組だったと思いますが、その司会者が、「パレスチナのリーダーの名前は、ヤッサ・アラファトと言うんだね。 ヤッサーーー。 ヤッサ。 なんと変な名前なんでしょう。」 そういう感じで、笑いながら喋っていました。 まあ、彼が、ユダヤ人だとしても、これほどの言葉を公共の電波で言えるでしょうか。 日本では、まず、番組から降ろされますね。
 
 まあ、その辺は、たとえば性表現でも、イギリスのゴールデンタイムのテレビドラマなどでは、全裸のシーンが、出てくることもありますが、アメリカでは、ご存知のとおりテレビドラマでは、女性の胸も出せないはずです。 似たような国ですが、細部では、いろいろ違いますね。